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栃木県宇都宮市で着物と着付け教室、振袖を扱う呉服専門店|宇都宮伊澤屋です。着物のお手入れや和のお稽古事、洋装・フェアトレードなども取り扱っております。

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ミルトス・ブログ

家紋が入ったきもの
2018年08月13日 お店のつぶやき 

 

いつも当店をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。

 

先日、親戚のお祝いの集まりがあって、少し改まった雰囲気の場所だったので、背中に一つ紋を入れたきものを着ました。

「あら、その家紋が御宅の家紋なのね」と言われましたが、違うのです。この家紋、「丸に笹竜胆(りんどう)」は実家の家紋。我が家の家紋は「丸に抱き茗荷」です。

よくお客様から「喪服の家紋は、お嫁に行くときには直すのかしら?」とか、「嫁入り支度の色無地には、家紋は嫁ぎ先の家紋を入れるのですか?」と聞かれますが、実家の家紋のままで宜しいのです。

昔はお葬式で、一人だけ紋の違うのがその家のお嫁さん、と分かったと言います。

 

家紋が入ったきもの。なぜか「家紋が入った」と言います。「家紋が付いた」とは言いませんね。

「一つ紋を入れる」「三つ紋(背中と両袖)入れる」と言います。

「入れる」と「付ける」の違いとはなんでしょうか?

家紋というものが、単に見た目の表記ではなく、深い意味を持ったものであるからではないでしょうか?

 

現在、日本には241種、5116紋以上の家紋が存在するそうですが、起源は平安時代、公家が牛車に、他家の牛車と間違えないように、「車紋」と呼ばれる模様を施していたのが始まりだそうです。

ヨーロッパにも「紋章」というものがありますが、全ヨーロッパで最古の紋章は、1010年に記録が残っているドイツ貴族のものだそうです。

 

「自分の家の家紋が分からない」というお客様がよくいらっしゃいます。

それはそうでしょう、と思います。現代の日常で家紋が必要なことってあるでしょうか?

そのことを反映してでしょうか。このブログを書いている今現在、ローマ字変換でキーを「KAMON」と打ち込みますと、第一候補として「カモン」(英語のcome onのカタカナ表記でしょうか?)が出てきてしまいます。

 

元々、その家を表す印としての家紋として、室町時代頃から、武具(刀や甲冑など)に好んで使用されましたが、江戸時代に入ると、家系や素性を示すための手段として武家が使用するようになっていったようです。

 

家紋を見ますと、単に家系の格を表すためではなく、その家が大切にしているものも見えてくることがあります。

 

例えば、島津氏の「丸に十文字」の家紋。今年の大河ドラマ「西郷どん」にも何度も登場する家紋です。ですが、元々は「鶴の丸紋に十文字」が島津氏の家紋でした。「蒙古襲来絵詞」という絵を見ますと、鶴の丸紋を上、十文字を下に書いた島津久親の旗が描かれています。

島津氏の本城となった鹿児島城は別名を鶴丸城と言います。

蒙古襲来より後、応仁の乱の頃に書かれた「見聞諸家紋」には、筆で書いた様な十文字の家紋が描かれています。

やがて戦国時代末期になると、十文字を丸で囲んだ今のデザインなっていき、名称も時には「轡(くつわ)紋」とも呼ばれるようになりました。「轡(くつわ)」とは、馬に噛ませて手綱を結んでコントロールするための馬具です。江戸時代の川柳で「くつわ虫」と出てくるのは、薩摩藩士のことを揶揄した表現だったそうです。

島津氏が十文字紋を用いるようになったのは、源頼朝から島津忠久に、十文字を旗・幕の紋として賜ったからなのだそうです。「寛永諸家系図伝」にそのような記述があるそうです。

また、その約150年後の「寛政重修諸家譜」では、同じく頼朝から「大十文字」の太刀を賜ったことで家紋にしたという話に変わってしまっているそうです。

時の権力者に信頼されて、その働きを期待されたことを記念して、ということなのでしょうか?

 

明治時代以降、庶民も紋服を着用したり、墓石に家紋を入れることが増えて、急速に家紋の普及が進んだようです。

近年では、シャツやズボン、ハンカチなどに家紋を縫い付けるサービスを行っている服屋も存在するようです。

 

さて、現代では出番がなくなりつつある、絶滅危機文化の一つである「家紋」。

普段、目にしない分、お見かけするとハッとする新鮮さがあります。

背中に一つ紋が入った色無地をお召しになっている若いお客様が、いつもより緊張なさった面持ちで改まったお席に出向かれるお姿は、お見送りする手前どもも拝見していて快いです。

 

「家紋」という生活文化。

「家」文化から「個人」文化へと変遷をたどっている現代日本にいるからこそ、見直して見ませんか?

 

まだまだ暑さが厳しいですが、お客様のご体調が守られますように。

どうぞご自愛くださいませ。

タグ: 家紋  宇都宮  宇都宮市  宇都宮伊澤屋  色無地  一つ紋  喪服 

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